AOPとは自分の暮らしや仕事などで感じる違和感・もやもやと、社会構造の問題を行き来しながら考える姿勢を伴う実践です。
このワークショップでは参加者自身のこれまでの「もやもや」した経験をふりかえり、基礎講座の内容をヒントにそのもやもやと社会構造の関係を考えながら言葉にしてみます。また他の誰かが感じた「もやもや」をうけとる練習をします。
この練習を通してもやもやを飲み込んだまま実践を続けることで誰かを排除したり差別したりすることを生み出さないような芸術文化活動​​の持続可能性を考えます。

日時
7月24日(水) 19:00〜21:00
会場
大阪公立大学梅田サテライト 文化交流センター
講師
「アート/ケア/文化政策」研究会
風間勇助(奈良県立大学地域創造学部講師)
南田明美(静岡文化芸術大学文化政策学部講師)
齋藤梨津子(早稲田大学大学院博士課程)
大蔵真由美(松本大学教育学部准教授)
竹丸草子(アーツカウンシル東京社会共生政策担当係長)

プロフィール

「アート/ケア/文化政策」研究会

当研究会は、ケアの倫理とアートと文化政策を架橋することを目指して、2021年から活動を開始しました。文化政策やアートマネジメントの現場では、2000年代以降に効率性や経済性を求める新自由主義的な価値観が広まりました。他方で、新自由主義がもたらす格差や社会的排除を問題視し、社会包摂への方策に注目する文化政策の研究と実践も生まれています。わたしたちは、「役に立つ、儲かる」という点がアートを価値づける際の優先事項として選び取られる中、そうではない価値を示しうる言葉を育むために、ケアの概念を参照しました。同時に、ケアもアートも、その良い側面ばかりを取り上げるのではなく、そこに内在する危険性にも十分に目を配りながら、議論することを目指しています。国内外の研究者・実践家・当事者のみなさんと共に、ケアとアートと文化政策について様々な視点から考え、言葉を紡ぎ、その実践を行う場が、この研究会です。

南田明美(みなみだあけみ)
静岡文化芸術大学文化政策学部講師

1985年、大阪府生まれ。2022年4月に、職場の関係で外国人集住都市である浜松市に移住。大学院生時代からの続きで「アート×多文化共生」を極めるべく、浜松市内の外国人集住地区で地域の方々と学生等と共にコミュニティ音楽/コミュニティ・アート活動を実施中。

齋藤梨津子(さいとうりつこ)
早稲田大学大学院博士課程

1984年三重県生まれ。シンガポールで文化研究を学び、帰国後コロナ禍の東京で子育てをする中でケアの倫理と出会いました。アートに参加するために、子どもをあずける・あずかる・あずけられることについて研究・実践しています。養育里親をやっています。

風間勇助(かざまゆうすけ)
奈良県立大学地域創造学部講師

1991年静岡県生まれ。刑務所とアートを実践、研究しています。この社会で埋もれてしまうかもしれない小さな声に、どのように寄り添い社会に表現としてコミュニケーションを生み出せるのかを考えています。

大蔵真由美(おおくらまゆみ)
松本大学教育学部准教授

1983年、岐阜県生まれ。小学校教諭を経験したのちに、社会教育、地域文化活動、文化政策、地域の教育史などを研究しています。最近は長野県で大学生や地域の方と共に子どもの居場所作りや子ども食堂の活動をしています。居場所というケアの場とアートをつなぐプロジェクトにも取り組んでいます。

竹丸草子(たけまるそうこ)
アーツカウンシル東京 社会共生政策担当係長

1969年、北海道函館市生まれ。アートプロジェクトにおけるアーティストワークショップを中心に実践・研究しています。コーディネーターの実践的な場づくりの知見を社会につなげていくための活動を探求中です。

アーカイブ

8月21日(水)「アート/ケア/文化政策」研究会の企画で、AOPワークショップを開催しました。会場には、風間 勇助(奈良県立大学地域創造学部講師)、南田 明美(静岡文化芸術大学文化政策学部講師)さんが駆けつけてくれました。

本講座でソーシャルアートに取り組む軸の一つがAOP(反抑圧的実践)です。しかし、やや難解な概念です。そうした概念を、参加者の「もやもや」した経験をふりかえりながら、自身の言葉、問題として語られることを一つの目的として、当該ワークショップが開催されました。
まず、風間さんから、AOPとは何かについて簡単なレクチャーがありました。その後、4つのグループに分かれて、自己紹介をしたり、メンバーの参加者の共通項をもとに、グループ名「電車ツー」「Japanese Food」「太陽の塔」「朝ごはん大好き」が名づけられました。
ワークショップでは、あらかじめ提出された参加者が経験した「もやもや」をもとに、台本が作成されています。
その台本とは、会社の夏のイベントを企画するにあたって、上司と職員たちの間で交わされる何気ない会話です。まずは、スタッフによるお芝居が披露されました。そこには、知り合いのバイオリンの弾き手に演奏を依頼するにあたって、無料でお願いすることを当たり前としたり、ジェンダーの役割を固定化した上司の発言が散りばめられていました。
そうした台本をもとに感じた、かんがえたもやもやを、グループごとにディスカッションし、台本を改編していきました。
各グループからは、上司を傷つけないように方向性を考えていく作戦が披露されたり、理想の上司が演じられたり、アートの適用場面に特化して深めた議論を紹介したり、部下の意見から気づきを得つつも、変われない上司が演じられたりしました。
当該ワークショップでは、フォーラムシアターの手法が応用されています。それは、参加者が日頃感じる問題を取り上げ劇として上演し、参加者を巻き込んだ討論(フォーラム)と劇(シアター)の再演を繰り返し、問題状況の変容を探っていく手法です。
最後の質疑では、抑圧する側が気づく難しさ、そのポイントなどに議論が及びました。