小田原のどか氏は、新進気鋭の彫刻家・評論家として幅広く活動されています。あいちトリエンナーレ2019で実践されたジェンダー平等を一つの契機としてアート界のジェンダーの問題にも関心を持たれ、「表現の現場調査団」の一員として「ジェンダーバランス白書」の公開に関わるなど、情報を発信されてきました。本講義では、彫刻とジェンダー、公害の原点ともいわれる水俣でのプロジェクトなどを題材に、現場、データ、そして理論を往還しながらアートとジェンダーについてお話いただきます。
プロフィール
小田原のどか(おだわらのどか)
彫刻家、評論家、版元主宰
彫刻家、評論家、芸術学博士(筑波大学)。1985年宮城県生まれ。作品制作、研究、評論執筆、版元運営を並行して行う。単著に『近代を彫刻/超克する』(講談社、2021年)、『モニュメント原論:思想的課題としての彫刻』(青土社、2023年)。主な編著に『この国(近代日本)の芸術:〈日本美術史〉を脱帝国主義化する』(山本浩貴との共編、月曜社、2023年)など。主な展覧会に、2023–24年「近代を彫刻/超克する—津奈木・水俣編」(個展、つなぎ美術館、熊本)、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」(国立西洋美術館、2024年)、「リメンブランス―現代写真・映像の表現から」(東京都写真美術館、2024年)など。『東京新聞』『芸術新潮』で評論を連載。表現の現場調査団メンバー、アーティスツ・ユニオンオブザーバー。独立系オンラインメディア「ポリタスTV」でアートとジェンダーについての番組を企画。
アーカイブ
2024年度大阪公立大学「EJ ART」人材育成プログラム基礎講座が始まりました。
基礎講座では、社会的課題を見つめ、アートマネジメントの持続可能性について学んでいきます。計3回の「社会的課題をみつめる」講座では、「 Equity(公平) とJustice(正義)」やAOPを自分の言葉で語れることを目的の一つとしています。
第一回目の講座では小田原のどかさんより、はじめに、あいちトリエンナーレ2019の出展作品などを事例に彫刻とジェンダーにまつわる問題が話されました。つづいて、「表現の現場調査団」の資料の数字や表を用いて、アートとジェンダーにまつわる様々な課題が語られ、現状を見えるようにすることの重要性、あたりまえだと思っていたことから気づきのきっかけを、当事者がどのようにつくることができるのか等の問いかけがありました。
その後、彫刻家として活動されている熊本県水俣・芦北の「つなぎ美術館」でのアートプロジェクトの事例から、地域社会とのアートの活動を行う際に、今いる人たちや、未来や過去に関係する人たちをイメージしながら、アート(アーティスト)として何を行うことが大切なのかを考え、模索されているとのお話を伺いました。また、評論家としての顔を持つ小田原さんからは、その著書の紹介や、評論家という立場よりご自身が権威的にならないような心構えなどが話されました。 全体を通して、アートとジェンダーの今日的問題、美術史の母屋を換える必要性などの示唆をえたことに加え、どのような仕事でも、事象へのフォーカスだけでなく、周囲を見渡すこと、見落とした人がいないかなど、心を配ることについてを学ぶことができたのではと考えています。