かつては公害問題に揺れ、現在は環境共生を目指している西淀川地域を舞台に、アートプロジェクトを展開します。このプロジェクトでは、アーティストやコーディネーターと共に企画を考案し、地域や住民と関わりを持ちながら、作品の制作を行います。

開催期間
7月〜11月(全10コマ)
会場
大阪市西淀川区
コーディネーター
松岡咲子(アートコーディネーター、女優)
アーティスト
村田のぞみ(アーティスト)

アーカイブ

① 「ガイダンス及びキックオフ」
日時:7月25日(木)19:00〜21:00
会場:大阪公立大学梅田サテライト 108教室

大阪公立大学「EJ ART」プログラムでは、7月25日、実践・場づくりの一つ「公害から環境共生~『困難な過去』を見つめていくためのアートプログラム~」がスタートし、ガイダンスが行われました。
最初に、このプログラムへの期待、アートとの接点などについて受講生との意見交換を行いました。ついで、アートコーディネータの松岡咲子さんから西淀のまち・あおぞら財団・これまでのアートの取り組みなどが、アーティストの村田のぞみさんから昨年実施したアートプロジェクト「アケルナルの光をみる」が紹介されました。その後、キックオフ、リサーチ、実施準備、はぐくみフェス実施、みてアート、振りかえりからなる今年度のスケジュールが説明されました。
地域の困難な過去を振り返る重要性、アートが地域に介入することの正当性などにも議論が及び、プログラムを通してみなで考えていくこととしました。

また、当該プログラムは、ゼミナール「環境共生とまちづくり」とも接続して実施されます。
ゼミナールでは、ロールプレイを実施し、実際、公害が起きたときにどう考え、どう行動するのか、当時の状況を考えながら、公害がなぜ起きるのか、なぜ防げないのかを考えていきます。こうしたロールプレイやフィールドワーク・レクチャーなどでゼミナールのプログラムが組まれ、そのうえで、上記の実践プロジェクトではアーティストと協働で作品づくりを行っていきます。
ゼミナール・実践を通して、「よいまちとはなにか?」をみなで考え、地域に対する見方に対する想像力を培っていきます。それは、アートの創造力にもつながるものです。客観的に状況を把握する技術を身に着け、アートを媒介に自身が誰かとコラボしてコーディネートできる人材の育成につなげていきたいと考えています。

② 「リサーチ(まちあるき)」
日時:8月31日(土)10:00〜

8月の2回にわたるゼミナール「環境共生とまちづくり」を経て、実践につなげていくため、9月7日(土)にリサーチとして、西淀川区・福町で街歩きを実施しました。
当日は、地元の公共施設である福町会館の管理責任者である、樋上雅一さんに案内をお願いしました。福町会館から出発して淀川河畔まで歩き、住吉神社に立ち寄り、再び福町会館まで戻った後、振り返りの機会を持ちました。
街歩きでは、今昔混じった街の姿が見えてきました。福は元々漁師町で、お風呂屋さんやお好み焼き屋さんなども多かったのですが、最近は比較的新しい戸建ての住宅が増えています。他方、ゼミナールのフォトランゲージで使用した写真と見比べると、高度成長期の頃の街並みもまた、部分的に残っていることがわかります。
街歩きでは人との出会いを通じて、終戦前に福町に生まれ、育った樋上さんが育んできた住民とのつながりや関係性も垣間見えました。振り返りでは、ご本人の生活史をさらに詳しく教えていただきました。

③ 「企画ミーティング」
日時:9月29日(日) 17:00〜

④ 「リサーチ」
日時:調整中

⑤ 「実施準備」
日時:調整中

⑥ 「実施準備」
日時:10月21日(月)〜25日(金)

⑦ 「はぐくみフェス実施」
日時:10月26日(土)

⑧ 「みてアート設営」
日時:10月27(日)〜11月1日(土)

「公害から環境共生」では11月2日~4日にかけて、「実践・場づくり」の総仕上げとなるアートプロジェクトを実施します。
今年度のコンセプトは「旗を振る」ということです。まず、オリジナルのクレヨンを作るWSを行います。このWSの要は、参加者の思い出に残る空の色を顔料で調合することです。参加者は完成したクレヨンを手に、会場に敷かれている大きな一枚の旗に、自由にドローイングできます。参加者の合計が増えていくごとに、旗は様々な線画や色で埋められていきます。最終日の4日に、淀川河畔で、完成した旗を振ることでお披露目となります。
「旗」というアイディアは、過去の大気汚染公害の歴史を振り返る中で、実際に旗を掲げて運動に取り組む、患者の方々の姿から着想を得ました。また、プロジェクトを実施する福町がかつて漁師町だったことから、旗は地元にとって大漁旗を想起できる象徴的存在になるのではないかという想いもあります。さらに、お披露目として「旗を振る」行為は、「手渡したいのは青い空」という言葉と関係しています。これは、患者の方々が運動の中で見出し、裁判の原告・被告双方が和解に至る道をひらいたスローガンでした。
参加者が、思い出の空を振り返ることをきっかけに、現在のような青い空が当たり前では無かったこと、それを取り戻すまでに多くの人達の努力があったことに想いを馳せてもらえればと思います。どのような空を将来世代に手渡していくのか。お披露目の場を通じて、表現していくことが今年度の試みです。
クレヨンWS・旗のドローイングは、西淀川区の毎年恒例のイベント、「みてアート」(11月2日~3日)のサテライト企画、「みてみて」(11月2日~4日)に位置づけて実施しています。初日の今日は、思わぬ台風となり、会場を変更して実施しました。雨漏りや突風に悩まされ、一時的に中断を余儀なくされましたが、荒天が弱まったころに改めて体制を立て直し、なんとか最後までやりきることができました。
大人・子ども問わず、どなたでも無料で参加を受け付けています。明日は天候の回復が見込まれるため、かつての公害の象徴だったドブ川を埋め立て、現在はサイクリングコースとしても地元に親しまれている遊歩道、大野川緑陰道路の一角で実施する予定です。お時間のある時に、お気軽にお越しください。

⑨ 「みてアート」
日時:11月2日(土)、11月3日(日)

11月3日は実践プログラム「公害から環境共生」、本番の2日目でした。昨日に引き続き、クレヨン作りWSと旗のドローイングを行いました。荒天の前日とは打って変わって、涼しい秋晴れの日となりました。

 内容は昨日と同じですが、天候が回復した本日は本来予定していた会場、大野川緑陰道路の住吉神社前の一角を借りて行いました。川を埋め立てて出来た大野川緑陰道路は、緑も充実しており、住民に親しまれる、とても快適な歩行者・自転車道です。みてアートのスタンプラリーで周っている人、散歩をしている人、サイクリングしている人、ランニングしている人、老若男女を問わず様々な人の目に留まり、また参加していただきました。

 みてアート連携企画「みてみて」は、11時から17時までですが、最終日の明日は少し早く15時頃の旗完成を目指し、淀川河畔でのお披露目へと移ります。引き続き、参加をお待ちしております。

⑩ 「ふりかえり」
日時:11月下旬予定

11月25日、大阪公立大学の梅田サテライトキャンパスにて、実践・場づくりの振り返りの会を行いました。全体は2部構成でした。
まず、みてアートのサテライト企画「みてみて」の3日間で起こったこと、それについて感じたことを付箋に書き出し、ホワイトボードに貼っていきます。その後、付箋に書かれたことに関して、皆で時系列に振り返りました。後半は、各自がプロジェクト全体を通して考えたことや学んだことを、改めて順に共有しました。
会全体を通して、WSの参加者・来場者と交わしたコミュニケーションの内容などが思い起こされました。また、現場で発生した、あるいは起こり得るハプニング、それに対してどのような体制を整えておくべきなのかについても考える機会となりました。様々な角度から意見が出され、とても有意義な会となりました。

プロフィール

松岡咲子(まつおかさきこ)
アートコーディネーター、女優

2017〜2022年に大阪音楽大学ミュージックコミュニケーション専攻・助手として勤務し、地域交流の場づくりや課題解決を目指すためのアートプロジェクトに携わる。現在はフリーランスとして、教育や福祉の現場でのコーディネートを多く手がけ、その芸術分野は演劇・ダンス・音楽・映画など多岐に渡る。

村田のぞみ(むらたのぞみ)
アーティスト

1994年奈良市生まれ。2019年に京都精華大学博士前期過程芸術研究科染織専攻を修了。その場所や個人が持っている記憶に関心を持ち、主に細いステンレス線やテグスを素材として扱い、その場所の物語を紡ぐような作品を制作している。主な展覧会に、瀬戸内国際芸術祭(2022,2019年/高見島)など。